日韓ディレクターズMT(Membership Training)
記念記録冊子 PDF販売ページ

 

日韓ディレクターズMTとは…

日本と韓国はお互いに最も近い外国でありながら、その交流は限られています。また、演出家同志がお互い作品について語る機会が大変少ないのが現状です。演出家たちが集まりお互いの演劇論をぶつけ合い、話し合うことで、そうした閉塞感を打破しようと日韓の演出家・舞台美術家・俳優が集まって行われたのが「日韓ディレクターズ・メンバーシップトレーニング」です。2014年から各回に数名ずつの登壇者を招き、プレゼンテーション、シンポジウム、舞台公演を交えて5回開催されました。

テーマは日韓の演劇の比較や交流に限らず、各演出家の演劇とのかかわり方や演劇についてのさまざまなテーマで話し合われました。記念して作られた全5回分の記録冊子は合計で231ページにも及びます。下記に少しずつ抜粋を載せておりますが、演劇に関わる全ての方、あるいは演劇ファン、また日韓の文化に興味のある方には一読の価値のあるものになっているのではないかと思います。登壇された方もとても率直に話されており、それぞれの演出家の考え方の違いが表れていることも読み物として面白いのではないかと思います。

以下のリンクで、全5回のMT記録冊子PDFを500円で販売していますので、もしご興味が湧いた方はこちらからご購入下さい。

 

日韓ディレクターズMT 記録冊子PDF販売 全5回分 500円

販売先 https://iksalonhyogensha.stores.jp

 

 

日韓ディレクターズMT 開催記録

第1回(2014年4月15日、16日)「ソウル・東京・大阪の演劇を語る」

[パネリスト]
ミン・ボッキ(劇団チャイム/ソウル)、矢内文章(アトリエ・センターフォワード/東京)、横田修(タテヨコ企画/東京)、笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー/大阪)

~シンポジウム記録から

ミン)…演劇というのはある劇場に来て、俳優から感動を受けて、その感動を受けている観客たちから俳優が感動を受けて、次の段階に行ける、その過程が演劇だと思い、また感動を受けている俳優を見てまた観客が感動を受ける、そういう化学反応があるのが演劇だと思います。その過程の中にあるのが演劇だと思います。…

横田)…仕掛け(いたずら)みたいなもの、仕掛けることで普段見えないものが見えるようになること全般を演劇だと言っていいと思います。…僕は教育に興味があり、自分の作品作りということよりももっと大きい枠で見たときに、社会をある方向にこちらから強制せずに、自主性をそがずに緩やかに組み分けしていくっていう仕掛けが演劇だと思います。…

笠井)…演劇の定義、意味というと、皆さんのお話を聞いていて、定義すべきではないというのが一番しっくりくるんです。…エンターテイメントじゃなくてアクティビティと呼んでいるものは演劇になり得る可能性があります。例えば「脱出ゲーム」自体を演劇ととらえることもできます。…定義できないから考えないのではなく、考えることで演劇が出来ること、やれることを拡張していくことが大切だと思います。…

 

第2回(2015年3月21日、22日)「ソウル・東京・大阪の演劇言語を考える」

[パネリスト]
ミン・ボッキ(劇団チャイム/ソウル)、矢内文章(アトリエ・センターフォワード/東京)、笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー/大阪)
[特別ゲスト]
横田修(タテヨコ企画/東京)

~プレゼンテーション記録から

矢内)…この、動詞を選んでいく時に役者さんの個性が表れていくんじゃないのかなと思うんです。…人からの影響、働きかけられる、影響があるっていうことがお芝居を作っていく中で重要だと思うんです。僕は動詞で考えることの1番最初は「聞く」ということだと思っています。「聞く」というのは台詞を聞くというのもそうですし、今感じて頂いたように相手の勢いだったり語調だったり、手振りだったり態度だったりいろんな情報があるんだと思うんですが、それらをまず「受け取る」という意味での「聞く」ことから始まるんだと思います。…

 

第3回(2016年1月9日、10日)「都市で演劇をする理由」

[パネリスト]
ミン・ボッキ(劇団チャイム/ソウル)、矢内文章(アトリエ・センターフォワード/東京)、横田修(タテヨコ企画/大阪)

~シンポジウム記録から

矢内)…都市はペルソナの集合体であり、いろんな仮面をかぶりながら生きているのが当たり前の状態、という話は非常に興味深かったですね。身体は全く同じ物で、二律背反するものをもちながら生きていることを演劇で示せたら面白いなと、それが僕の目標でもあるなあと感じながら聞いていました。…

ミン)…どうして僕は演劇をしているのかなと考えるようになりました。今こうやって客席に皆さんがいらっしゃって、舞台に私たちが座っていて、私たちが一つ一つ話している事に本当に関心があるのか、何かトラブルがあった時にこそ私たちは生きている反応をするだろうし、私たちが演劇を作ることはそういった生きている瞬間を作るためにやっているのではないかと思います。ではどうしたら劇的な瞬間を作ることが出来るか、それが私にとっては一番大きな悩みです。…

横田)…演劇をする人間は、フビライカンに対するマルコポーロのように自分たちが作っている世界観を形にして提示することが大事で、観ている人たちの中に花が咲けばいいですよね。ではそこをどう工夫して行うか、という方法論を模索するところにミンさんが言っていた劇的なことが入ってくると思いますし、実現するためにはどんな俳優と仕事をしたいか、どんなふうになってほしいかということも絡んでくるんではないかなと思います。…

 

第4回(2017年3月23日~27日)「空間」

[パネリスト]
ミン・ボッキ(劇団チャイム/ソウル)、矢内文章(アトリエ・センターフォワード/東京)、横田修(タテヨコ企画/大阪)、笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー/大阪)、サリngROCK(突劇金魚/大阪)、田辺剛(下鴨車窓/京都)

~プレゼンテーション記録から

サリng)…「空間」を考える時に「演劇」とか「表現活動」ってなんだろうと行き当たって、それを考えてみると、演劇や絵、写真は具体例を出すことかなって思ったんですよ。例えば生活していて、たまに心に浮かぶ、愛って素晴らしいな、とか、友達っていいなとか、夏ってステキやなとか、思ったことをそれの例として出すのが表現活動と思うんですよ。…なんで具体例にしないといけないのかなって思ったら、人って押し付けられて言われると拒否反応があるんで、「愛って素晴らしいよね」と言っても、「別に。はあ…」みたいな。…お客さんに役者の感じている思いを具体例として見せて、受け取ってもらって、はじめてそれぞれが「わかる」って思ったり、「泣ける」って思ったり、心を動かしてくれると思うんですよ。だから私たちは登場人物の感情を伝える時に、いかにヒントだけでお客さん自身が想像してくれるように全力を注いでいます。…

 

第5回(2018年4月19日~22日、27日~29日)「俳優の身体」

[パネリスト]
ミン・ボッキ(劇団チャイム/ソウル)、矢内文章(アトリエ・センターフォワード/東京)、横田修(タテヨコ企画/大阪)、笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー/大阪)、サリngROCK(突劇金魚/大阪)、田辺剛(下鴨車窓/京都)、坂口修一(大阪)、成清正紀(KAKUTA/東京)、古川貴義(箱庭円舞曲/東京)、ブラジリィー・アン・山田(ブラジル/東京)

~シンポジウム記録から

古川)…俳優の身体について僕が求めているのはそこに生きている人間の動きで、作品中には演劇という見せ物としての動きが多かったので、身体の話をするとなると難しいかもしれない。ただ、その考えが演劇を狭めてしまっているのかもと自分自身で感じることもある。…見せ物のための身体なのか、俳優がコントロールしている身体なのかというところが疑問だと思った。趣味の問題でもあるけど、デフォルメした行動であっても、人物の行動原理に照らし合わせて必要な行動だと思えたら、その行動は見せ物にもなっているし、嘘もないし、素敵だったと思う。…

山田)…身体といってもリアルよりの身体なのか、見せ物よりの身体なのか。アルコールを飲む事がフィルターとして入ってしまって、もっと生理的な反応をみることができなかったなと思う。…芝居として締めるところは締めるということをしていたので、女性の独白からもっとだらしなく展開していってもいいのかもしれないと思った。実験的にはとても面白い試みだと思いましたが、アルコールを飲むということをもっと利用できたようにも思います。…

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